やっぱりドタバタ?(笑)
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


あの悪夢のような酷暑はどこへやら。
時々、まだ半袖の制服なのが恨めしいような朝晩だったりする
そんな新学期が始まって、早くも1カ月が経とうとしており、

 「今朝方、金木犀の匂いがして来たのですよ。」
 「あ、私も、ご近所のお家で咲いているのを見つけましたvv」

山茶花やツツジやサツキに並ぶほど
ポピュラーというのは大仰かも知れないが、
沈丁花や梔子と並ぶ“香りのいい花の咲く木”とされているのが金木犀。
花はそれこそ小指の先ほどもない小ささなれど、
その華やかな甘い香りは
秋の清かな風に乗り、ずんと遠くまで届くことで知られており。

 「どうしてでしょうか、気持ちが浮き立つますわよね。」
 「ええ、本当にvv」

思わずどこで咲いているのかしらと探してしまうほど、
ヲトメ心を惹き寄せもする、何とも不思議な魅惑の香でもあり。

 「あくまでもヲトメ限定なんでしょね。」
 「そうでしょね。」

男の子には関心さえ呼ばないでしょうし、
忙しい方々では、
探してみようとまでの意欲は持たぬに違いなく、なんて。
剣道部の朝練で随分と早めに登校して来ていた七郎次と、
こちらさんはご近所ならではの気分次第、
今日は早いめに出て来たらしい平八が、
白地基調の半袖セーラー服から
すんなりと伸びる腕のまろやかさも嫋やかなまま、
窓枠へと肘をついたり頬杖ついたりしつつ。
それぞれにお手入れも行き届いた肌や髪の輝きが、
これまた それぞれなりに
ファンやシンパシィの皆様をはしゃがせておいでの、
瑞々しくも麗しのご尊顔、
教室の窓辺からお外へ向けていらっしゃり。
昨夜ちょっぴり降ったらしい雨のせいもあるのだろ、
涼しい以上にちょっぴり肌寒い空気を、
それでも勇ましくも受け止めて、
女学園の前庭にあたる校庭をのんびり見渡していたのだが、

 「…ありゃ。」

ふと、ひなげしさんが妙な声を出し、
窓辺の席からカタンと立ち上がる。
それへと気づいた白百合様が、
明るい陽射しに青玻璃の双眸を透かしつつ、
んん?と目顔で訊きつつも、
机の中、隅に寄せてた指し棒もどきを
こそりと制服のスカートのポッケへと忍ばせた呼吸が、
何とはなくでも察しがつく人には、やれやれと恐ろしい所作であり。

 「これ。」
 「おっと…。」

のほほんと外を眺めていたふりをして、その実、
手のひらの中に隠し持っていたのが、
名刺サイズの手鏡…に見せかけた特殊液晶モニター。
それを“ほれ”と七郎次へ見せる平八で。
スマホから腕時計経由、手鏡へ着信という、
リアルタイムのどこかの小道を映し出してるそれ、
電脳小町特製の小さな小さな画面の中では。
彼女らのもう一人の親友たるお嬢様が、
エアリィな金の綿毛をシャープになびかせ、
濃色のひだスカートを華麗に躍らせて。
ダメージデニムにパーカー姿、鼻の途中にピアスを留めてる若造と、
金茶色を通り越し、何だかまだらな白髪みたいな髪をした、
よれよれにしなだれたジャケットに
膝の抜けたカーゴパンツというやっぱり若いのと。
自分よりもやや上背のあろう男衆相手に、
小気味の良い格闘を繰り広げておいで。
舞うようなという、優雅で鷹揚なそれではなく、
だがだが、余裕がないというのでもない。
二人を相手に、捕まりそうで捕まらず、
その手に握られた特殊警棒を、風を切るよに鋭く振るい、
暴漢たちへ叩きつけ…てはいるのだが。
何故だか、微妙に遠慮というか加減をしているようで、
足元を掬われて転げたり、仲間同士でぶつかりかけたり、
そういうカッコで翻弄し続けている模様。

 「まったくもう、久蔵殿ったら油断も隙もない。」

 「つか、このエリアのこんなに早い時間に、
  こういう輩が現れるのも不思議な話ですけれど。」

それぞれに小さなポーチを手にとって、
ちょっとご不浄までという体裁を取り繕い。
それは朗らかに微笑い合いつつ、
その実、互いにしか届かぬ話法でそんな物騒なやり取りを交わし。
化粧室へ入ると、一番奥のドアに向かった…ように見せかけて、
も一つ奥の、お掃除道具を収めた古めかしいロッカーの扉を開け。
そこの壁にだけついている小窓に手をかけ、
枠をとんと押して 壁ごとクルンと
どんでん返しで開けたのがひなげしさんなら。
中庭の一角に大きく開いたそこから、
まずはと外へ駆け出したのが、
女学園が誇る“韋駄天娘1号”こと 白百合さんで。(こらこら)

 「取り押さえた輩、所轄に引き渡しますか?」

それぞれにヘアピン仕様のインカムマイクを前髪に装着し、
周囲に自分たちの挙動を見とがめられていないかを確認しいしい
もはや背中さえ見えない七郎次へ、
後から追う、文字通りの後方支援班の平八が訊いたのは、
細かい説明不要で、
よく言ってツーカーな知り合いが警察関係者にいるからだが、

 「状況次第ですかね。」

管轄が違い過ぎる人たちでもあるので、
そうそう“偶然通りすがった”を多用させるのも何だし、
何より彼らを呼べば、

 「叱るならここぞとばかり、
  長々とお説教されかねませんしね。」

 「ですよねぇ。」

厄介な融通プラス、そんな面倒まで背負って来る人らでは、
いちいち報告するのが億劫になるのも無理はないと……。
そんな順番で思ってるようですよ、保護者の方々。(笑)
スマホへ呼び出した地図に沿い、
出来るだけ普通一般のお友達が登校中の通学路を通らぬコースを
こちら、ややのんびりとしたペースで てってこと平八が駆けてけば。

 「ひででで…っ。」

ぱっしーんという軽快で物騒な衝撃音の消えぬうち、
そんな情けない悲鳴が上がり。
現場への最後の角を曲がってみれば、
一見 ごみステーション風の簡易な素通し小屋のある手前にて、
今朝はお初のお目見え、三木さんチの久蔵さんが、
ぶんっと特殊警棒を振り切って、
怪しい男衆二人をアスファルトの道へ、叩き伏せていたところ。
あとで訊けば、相手は丸腰の素手だったので、
武装したこちらが一方的に叩き伏せるのは“弱いものいじめ”にならぬかと、
そこを案じて、なかなかとどめが差せなかったヒサコ様だったらしく。(苦笑)

 「おや、片付いておりましたか。」
 「何なんだよ、お前らよ。」

後から後から、同じ制服のお嬢様が現れて、
久蔵に手古摺ってたものだから、
もしかせずとも七郎次を人質にしかかったらしい片やが、
そのご本人から石垣に張り飛ばされたらしく。
その上へと倒れ込んだもう一人、
鼻ピの若いのが情けない声を出している。

 「どうせゴミなんだから、
  持ってったっていいんじゃんかよ。」

背後の小屋を肩越しに見やった彼の言いようへ、
だがだが 久蔵はにべもなく。

 「ダメだ。」

軽やかな癖っ毛の前髪をぷるんと揺すり上げつつ、
毅然と言い返して見せるばかりだし、

 「そうですよ?
  大体、扉にかってある錠前を切ってまでってのは、
  立派な窃盗予備にあたります。」

長く延ばしたポールを槍としてその手へ握っておいでの七郎次までもが、
きりりとそんな言いようをしたけれど、

 “……はい?”

まるきりの全然、事情が見えていない平八が、
いつもの糸目を点にしてしまった、罪な朝でもございます。





器物損壊犯であるには違いなく、
最寄りの警察に連絡し、
これこれこうで、しかも、

 『わたしたちに殴りかかりまでしたんですよぉ。』
 『な…っ。』
 『余裕で勝ったんは そっちだろうがよっ。』

一方的に暴力ふるったという言いようは、
あまりの盛り過ぎ、それはなかろと、
そこは相手も心外なと思ったらしいものの、

 『そりゃあ 必死で抵抗しましたしぃ。』

見るからに麗しいヲトメらが、そんな言いようをしたのでは、
お巡りさんとて心穏やかではおられまい。
しかも、微妙ながら言ってることに嘘は無し。

 “今、そうっかなぁ?と思いましたね、あなた。”

こらこらこら、サイトへお目見えの方に言い掛かりをつけない。(苦笑)
ただまあ、久蔵殿とて そこまで始終喧嘩っ早いワケではなくて。
些細な行儀の悪さくらいなら、看過することだってあるくらい。
とはいえど。
こちらの連中の場合、
ただ怪しいことをしていたのみならず、
何となく見とがめた近所のご婦人へ“文句あっか”と歩み寄り、
居丈高になって脅すような言いようをしていたところへ、
たまたま通りすがったヒサコお嬢様が かっち〜んと来たらしく。

 でも、此処って通学路から外れてますよね?
 ………。(頷)
 駅前でご婦人から道案内を頼まれた? あらまあ。

そしてそして、何でまた 此処らで見かけぬ彼らが
ごみステーションの小屋の扉をこじ開けていたかと言えば、

 体育祭だの文化祭の準備にと、
 段ボール箱の争奪戦が始まってたらしくって

ああそっか、今時はお店に前以て頼みでもしとかないと。
そうそう空いた段ボール箱まで置いとく余裕はないからって、
大型店舗ほど契約した業者さんが小まめに引き取りにくるらしいしね。

 「でもねぇ、
  集めた段ボール箱を
  学生相手に売りさばくつもりだったってところが
  いただけませんよね。」

 「何でまた、そういうことを思いつくかなぁ。」

自分たちが使うだろからと、
プールし始めただけだってんなら まだ微笑ましいで済むけれど。
ただ視線を向けた格好になっただけの人を威嚇した辺りの
ああそうサ後ろ暗いことやってんだ文句あっか的な逆ギレは、

 「そういう恫喝が、
  そりゃあおっかないと感じる人もいるんだってこと、
  どっかで判っててやってるから許せない。」

平八が唇を曲げ、
そんな彼女へ七郎次が深々と頷いてやる。
朗らかな彼女らの記憶の底、
どこの異世界なんだか、
遠い遠い別世界に居たらしい前世の記憶の中には、
偉そうに踏ん反り返る軍人らの無法に
震え上がってた人々の様子も刻み込まれており。
正義感というのとも微妙に異なる何かが
ついつい働いてしまっての大暴れであるワケで。

 “ゴロさんも” “兵庫も” “勘兵衛様も”

そういうのへ多少は義憤を感じてたはずだのにねぇと、
叱られるばっかなのは割が合わぬと、
膨れもするお嬢様たちだったりするよで。
まあまあ、どこからか匂って来た 金木犀の甘い香りに免じて、
どうかお怒り収めて、秋の風や陽を堪能して下さいませvv




    〜Fine〜  14.09.26.


  *10月には体育祭、
   そして11月の頭には学園祭も待ち構えておいでのお嬢様たち。
   その前のちょっとしたハプニング…というレベルの
   かわいいドタバタでございます。
   此処んところは大人しい方の彼女らですが(そうだっけ?)
   どうかこのままでいてねと、切に願ってる誰かさんたちへは、
   残念な風向きになったようで。
   ま、いつものコトさ!(こらこら)

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